漢検五級

イッシンフラン

一 心 不 乱 わきめもふらず、ただ一つのことに心を集中し打ち込むこと。 「一意専心」「一生懸命」「一所懸命」「一心一意」「一心一向」「精神一到」「無我夢中」「無二無三」ともいう。 ★ 菊池寛「恩讐の彼方に」に用例がある。 《が、市九郎は一心不乱に…

シンキイッテン

心 機 一 転 何かをきっかけとして、気持ちをすっかり入れ替えること。 明るい気持ちに切り替えて、新たにやり直すこと。 「飲灰洗胃」「改過自新」「緊褌一番」「呑刀刮脹」ともいう。 ★ 夏目漱石『それから』に用例がある。 《三四年前の自分になつて、今…

リロセイゼン

理 路 整 然 文章や議論などにおいて、論理や筋道が整っていること。 かつては「理路井然」と表記することも多かった。 「順理整章」「条理井然」ともいう。対義語は「支離滅裂」。 ★ 菊池寛「仇討禁止令」に用例がある。 《恒太郎は、成田の怒声にも屈する…

トクイマンメン

得 意 満 面 事が思いどおりになって、満足した気持ちが顔いっぱいにあふれるさま。 「喜色満面」ともいう。 ★ 太宰治『お伽草紙』に用例がある。 《狸は爺さんに捕へられ、もう少しのところで狸汁にされるところであつたが、あの兎の少女にひとめまた逢ひた…

カンゼンムケツ

完 全 無 欠 どこから見ても欠点がなく、完璧であること。 「完全無瑕」「完全無比」「完美無欠」「金甌無欠」「十全十美」「尽全尽美」ともいう。 ★ 石川啄木「雲は天才である。」に用例がある。 《正真の教育者というものは、其完全無欠な規定の細目を守っ…

ソウシソウアイ

相 思 相 愛 互いに慕い合い、愛し合っていること。 俗にいう「相惚れ」「両思い」「ラブラブ」。 ★ 田中正造「非常歎願書」に用例がある。 《越へて明治三十四年十二月に至り各地の有志約二千名親しく来りて沿岸被害民を慰問し、谷中川辺二村の人民亦許多の…

チソクアンブン

知 足 安 分 高望みしないこと。自分の身分や境遇に応じ、分をわきまえて満足すること。 「足るを知り分に安んず」とも読む。「知足」と二字で用いることもある。 「安分守己」「一枝巣林」「飲河満腹」「小欲知足」「巣林一枝」「知足守分」「知足常楽」と…

チュウソウヤム

昼 想 夜 夢 目が覚めている昼に思ったことが、夜に眠ったときに夢となって現れること。 ★ 列御寇『列子』〈周穆王〉が出典である。 《子列子曰、神遇夢爲、形接爲事、故晝想夜夢。神形所遇、故神凝者、想夢自消。》 (子列子曰く、神遇ふを夢と為し、形接は…

イクドウオン

異 口 同 音 皆が口を揃えて同じことを言うこと。皆の意見が一致すること。 「異口同辞」「異口同声」「異人同辞」「衆議一決」「衆口一致」「満場一致」ともいう。 ★ 『宋書』が出典の一つであるようだ。 《今之事跡、異口同音、便是彰著、政未測得物之數耳…

セイシンセイイ

誠 心 誠 意 偽りのない純粋な真心。「誠意誠心」ともいう。 ★ 福沢諭吉『福翁百話』に「誠意誠心」の用例がある。 《天下の事を憂ひて誠意誠心一点の私なし》 ただの本心ではなく、私利私欲がないことが「誠心」であり「誠意」なのである。 ★ 「誠心誠意」…

バジトウフウ

馬 耳 東 風 他人の意見に心を止めず聞き流すこと。無知のため理解できないこと。何を言っても無関心で反応がないこと。「呼牛呼馬」「対牛弾琴」「対驢撫琴」「馬の耳に念仏」「東風馬耳を射る」ともいう。 ★ 李白「王十二寒夜独酌に懐ひ有りに答ふ」が出典…

キショウテンケツ

起 承 転 結 文章の構成。物事の順序。 元は漢詩の構成法で、まず詩意を起こし、次にそれを受け発展させて、さらには場面や視点を転じ趣を変えて、最後に全体をまとめ締めくくる。中国語では原典に忠実に「起承転合」という。 ★ 『詩法源流』が原典であると…

フロウフシ

不 老 不 死 いつまでも若々しく、生きながらえること。「不老長寿」「長生不老」ともいう。 列御寇『列子』湯問の次の一節が出典である。 《珠玕之樹、皆叢生、華実皆有滋味、食之皆不老不死。所居之人皆仙聖之種。一日一夕飛相往來者、不可數焉。》 燕の王…

タイキバンセイ

大 器 晩 成 鐘や鼎のような大きな器は作り上げるのに時間がかかるということ。転じて、大人物は遅れて才能や頭角を現すという、つまり、偉大な人物は、じっくり時間をかけて実力を養っていくため、他人より大成するのに時間を要するという意になった。「大…

ケイテンアイジン

敬 天 愛 人 天を敬い、人を愛する。天を敬し、人を愛する。 「敬天愛民」「敬天撫民」ともいう。 ★ この語は、今日ではたとえば敬宮愛子さまのお名前の由来になったり、京セラの社是にもなったりして、たいそう広く知られている四字熟語と言える。 そして、…

ゼンゴフカク

前 後 不 覚 正体がはっきりしないこと。意識が朦朧として、時間の後先が分からなくなること。泥酔したり、気を失ったりする状態。「意識朦朧」「人事不省」「茫然自失」ともいう。 ★ 「前後不覚」というと、どうしても酒に飲まれた酔っぱらいのイメージが強…

タジタナン

多 事 多 難 事件や困難が多くて大変なさま。 類義語は「多事多患」、対義語は「平穏無事」である。 ★ 木下尚江「火の柱」に「多事多難なる明治三十六年」という言い回しが出てくるように、この四字熟語は「時代」や「国家」を説明する際によく使うようだ。 …

ゴショウダイジ

後 生 大 事 来世の安楽を最も大切にするという仏教の教え。転じて、物事を非常に大事にすること。 対義表現に「後生より今生が大事」という言い方もあるが、これは「後生が大事」のパロディ的表現であろう。 「後生」は、「後生畏るべし」のときは「コウセ…

キリャクジュウオウ

機 略 縦 横 策略を状況に応じて自在に巡らし用いること。 「奇策縦横」「機知奇策」「機知縦横」「機謀権略」「神機妙算」「神算鬼謀」「知略縦横」といった四字熟語もある。 夢野久作「山羊髯編輯長」に用例が見える。 《実際一つの新聞の編輯長となると、…

ソウギョウシュセイ

創 業 守 成 「創業は易く、守成は難し」あるいは「創業は難く、守成は更に難し」の略。 新しく事業を興すことは易しいが、それを守り維持していくことは難しいという意。 「創業守文」「草創守文」とも。 呉兢撰『貞観政要』が出典である。 今から千三百年…

インガオウホウ

因 果 応 報 ひとの行いの善悪に応じてその報いがあることを「因果応報」という。 出典は『大慈恩寺三蔵法師伝』(慈恩伝)と言われており、仏教の根本法則である。「前因後果」という言い方があることからも分かるように、前世の行いが後世の報いを決めると…

ユダンタイテキ

油 断 大 敵 気を緩め注意を怠ると、必ず失敗を招くから、十分に警戒せよという戒め。「伏寇在側」( フクコウザイソク )「油断強敵」( ユダンゴウテキ )「油断は不覚のもとい」「油断は怪我のもと」などともいう。 「油断」という語の由来は『涅槃経』にある。昔、あ…

ムガムチュウ

無 我 夢 中 一つのことに心を奪われるほど熱中して、我を忘れてしまうことを「無我夢中」という。「無我」というのは、「忘我」と言い換えてもよいだろうが、ルーツを辿ると仏教用後に行き着く。簡単に言えば、我執などの雑念から超越する状態が「無我」で…

ココントウザイ

古 今 東 西 今昔を問わず、洋の東西を問わぬ。要するに、Anytime, Anywhere. いつでも、どこでも見られる普遍にして不変なるものを「古今東西を問わず」という例の慣用句で表すのだ。 私は高校生のころ、たいへんな天の邪鬼で、四字熟語も他人が使う四字熟…

センリドウフウ

千 里 同 風 「万里同風」とも言ってもよいのだが、「非常に遠いところにも同じ風が吹く」ということから派生して、「天下が遍く太平に治まっていること」を意味するようになった。ただし悪い意味で使うこともあって「天下がいたるところで乱れている」とい…

リンジュウショウネン

臨 終 正 念 「臨終正念」という四字熟語は、仏典を読んでおると、枚挙に暇がないほどに、多く出てくる語である。たとえば、「一遍上人語録」には「南無阿弥陀仏と唱へて、わが心のなくなるを臨終正念といふ」との説明が出てくる。要するに、「成仏」という…